海上運送法(かいじょううんそうほう)
海上運送事業(船舶運航事業(旅客定期事業等、海上において人または物の運送をする事業)、船舶貸渡業、海運仲立業及び海運代理店業をいう。)の運営を適正かつ合理的なものとすることにより、輸送の安全を確保し、海上運送の利用者の利益を保護するとともに、海上運送事業の健全な発達を図り、もつて公共の福祉を増進することを目的とする法律である。その内容としては、事業の許可・届出、運送約款の認可・届出等のほか、日本船舶及び船員の確保、準日本船舶の認定、先進船舶の導入促進、海上運送事業に使用する船舶の規格・船級等に関する規定が含まれている。1949年の法律制定以後も改正を重ねてきており、2006年には安全確保に関する諸々の規定が、「運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律」(以下「運輸安全一括法」:下段の備考1参照)によって組み込まれている。
(備考1 運輸安全一括法)
2005年頃における運輸分野の事故等の発生状況(陸海空の交通モードでのヒューマンエラー等が背景と見られる事故・トラブルの多発)に鑑み、運輸の安全性の向上を図るため、この運輸安全一括法によって各交通モードの事業法(鉄道事業法、軌道法、航空法、道路運送法、貨物自動車運送事業法、海上運送法、内航海運業法等)の改正等を一括して行ったものであり、これによる改正法は2006年10月から施行されている。この改正により各交通モードの事業法について、法の目的に「輸送の安全の確保」が追加され、また運輸事業者に対する安全管理規程の作成・届出の義務付け、安全統括管理者の選任・届出の義務付け等、安全確保に関する諸々の規定が組み込まれた。
(備考2 運輸安全マネジメント制度)
上述の運輸安全一括法の施行と合わせて、2006年10月から導入されている制度であり、運輸事業の根幹を成す「輸送の安全の確保」に向けて、従来からの交通モード毎の事業法に基づく保安監査に加え、運輸事業者自らが経営トップから現場まで一丸となった安全管理体制を構築・改善するよう促すことにより、輸送の安全性向上を図ることを目的とするものである。本制度において、運輸事業者は自主的かつ積極的に輸送の安全を推進し、その構築した安全管理体制をPDCA サイクル(Plan Do Check Act(計画の策定、実行、チェック、改善)のサイクル)により継続的に改善する。また、国土交通省は、運輸事業者の安全管理体制の構築・実施状況を確認するため、担当者が運輸安全マネジメント評価(運輸事業者の経営トップ及び安全統括管理者等の経営管理部門へのインタビュー、文書・記録類の確認等)を実施し、安全管理体制の評価とともに、更なる向上に資するための助言も行う。